ウガンダの純潔政策

エキサイトの世界びっくりニュースにつぎのような記事があった。
http://www.excite.co.jp/News/odd/00081102725932.html

処女数百人が婚前交渉禁止・禁欲を訴えるデモ決行
カンパラ 10日 ロイター]ウガンダの首都で数百人の処女が終結し、婚前交渉禁止する
誓約を復活させるように大統領夫人に面会して嘆願した。
「もしあなたに恋人が居なかったら、まわりから変わっていると呼ばれるでしょう?」と
23歳のアレックス・ミュメールさんは、太鼓を叩き、トランペットを吹きならしている
青少年たちに向かって問いかけた。「そう、私たちは変わっているかもしれない。私たちは
イエス・キリストに夢中なのです。イエスは我々の身請け人であり、保護者なのです」と演説し、
群衆とジャネット・ムセヴェニ大統領夫人から大喝采を浴びた。
(...)

全文を読めばウガンダの高いHIVポジティブ率とそれへの対策としてのアンチ HIV/AIDSキャンペーンの一環であることがわかる。またエイズがアフリカで蔓延していることに対し、アフリカの人々がエイズをばらまいているかのような印象を産み出していることへの反感もあるようだ。
がしかし。引用したところあきらかに調子がおかしい。エキサイトはこんな生臭いニュースを海外びっくりニュース!ってなカテゴリにいれていいのか。正気か。
このニュースに関連して、“デモ”の前にはこういう報道もあった。BBCより:http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/4061779.stm

Call for Ugandan virgin census 
Uganda's First Lady has called for a census of the sexual habits 
of the country's younger generation as part of the fight against HIV/Aids
(...)
Mrs Museveni has backed a campaign for young Ugandans to pledge 
abstinence until marriage and next week will host a party for some 70,000 virgins. 
(...)

めちゃめちゃ意訳すれば、ウガンダではずっと純潔キャンペーンがエイズ対策として重要視しており、1990年代半ばにはさまざまな対策によって保菌率の大幅な減少に成功したにもかかわらず、最近保菌率がその当時よりも上がってきているので再び純潔を幅広く呼びかける、と。で、その一環として大統領夫人が処女の集会を後援した、と。
しかしデモの主催者について、エキサイトの翻訳文中にはこうある。

教会や青少年グループ、米国に本拠を置く「トゥルーラブを待つ会」などで組織され、
東アフリカに位置するウガンダの国中から500人以上の処女が集った。

はいここ、生臭いですね、「トゥルーラブを待つ会」。原文に当たるとこれは "True Love Waits" という団体で、ティーンエイジャーと大学生に結婚までの純潔を守ろうと呼びかけるムーブメントであり、アメリカの南部バプテスト連盟にバックアップされていて、全米に240万人の会員がいるそうだ。会員さんは銀の指輪とかしてるらしい。どんな指輪かを見るには彼らのサイトへ*1。 テキサス知事時代にブッシュが強力に支援したという話もある*2
そもそもこの南部バプテスト連盟がすごく信徒数のおおくファンダメンタルな会派。処女懐胎は事実だとしたり創造論を教えたりするみたい。詳しい話はウィキペディアでどうぞ*3。で、南部バプテスト連盟について拾い読みしていたらこんなニュースも発見。
キリスト教界ニュースより:http://news.kirisuto.info/data/sekai/1074467081.html

「あまりにも自由主義的」な世界バプテスト連盟脱退を
 【ニューヨーク=ENI・CJC】米国南部バプテスト連盟総会委員会が、
世界バプテスト連盟からの脱退を提案している。
 世界連盟が「異常で危険な神学」を提唱しており、それはあまりにも自由主義的であることが理由。
 世界連盟が女性聖職を認め、教義面での自由主義的傾向や自由な聖書解釈を認めていることに、
南部バプテスト連盟では反発する動きがあり、脱退提案も繰り返し出されている。今回の提案には、
同派が新たな国際的な組織を検討すべきだということも含まれている。
(...)

キリスト教会って最近リベラルだよねーとか思ってたら、やっぱり内部対立してたのね。期待通りだな。
とまあそれはおいといて。エイズが蔓延することがいいとは決して思っていないし、そのための対策として一定のパートナー以上とセックスしないというのは重要なことだと思うけれど、なんというかそういう保健・福祉上の問題に、宗教モラルがもちこまれるのがとてもいやな気分がする。ウガンダでは人口の6割がキリスト教徒でその半分がプロテスタント(残り半分はカトリック)だそうだが、どれくらいこの南部バプテスト連盟系グループが集会ではりきってたんだろうか。エイズになりたいわけではないから、自衛のためにセーフ・セックスが必要かもしれないけれど、それと不特定多数との性交が不道徳かどうかはまた別だろう。都合良く混ぜるな。もー。