京都に残る文化遺産

京都駅のそばにすごーくうらびれた宿屋が何軒かあって、横を通るたびに、ふむ、これが木賃宿というものだろうか、という思いがする。実際に泊まったことはないので実態は分からない。中は超豪華旅館なのかもしれない、ってなことはないとおもうけど。一泊数千円だし。京都は空襲で焼けていないし万博もオリンピックもなかったのでいろいろ面白い建物が残っているけれど、世界遺産よりはこういううらぶれ遺産みたいなのがとてもいい雰囲気だと思う。安吾とかの随筆にでてきそうな、東京がイヤになった文士が京都でしばらく暮らすときの安宿というのはこんなかんじかなーと思いながら歩くととても楽しい。あと自分は育ちが悪いので下町風情なところにもほっとする。
ほかに京都で面白いのは、観光文化歴史都市のわりに、人間がちゃんとすんでいるところ。御所の横とか二条城の裏とかに普通に人が住んでいるっていうのがもう。萌える。街萌え。先日、久しぶりに三条通周辺を探索したが、むかしのしっかりしたビルヂングをリフォームして小洒落カフェやらセレクトショップやらにするのがすっかり流行っていて、微妙にオシャレスノッブな雰囲気になってきている。若者の街っぽくもある。が、その合間合間に老舗といえば老舗なのだが、要は昔風の住居兼店舗な専門店(しかも紙とか香とか足袋とか確かに京都っぽいといえば京都っぽいがイマドキ商売大丈夫かいなといいたくなるよな業種)があるのがとてもいい。また三条の一本北、姉小路をうろついていると住民が景観保全運動をしていた。街角ビラ好きとしては見逃せない光景だ。サイトもある:http://ane.cup.com/index.html こういうちっさい通りの風情がいいんだよね。京都はおもちゃ箱みたいなとこで、狭い方へ狭い方へと歩いていくのが面白い。ただしあんまり狭いときは人の家の路地の可能性があるので注意。住宅街の狭い通りをたどっていって、いまどき氷屋を発見したり卵をばら売りで売ってる食料品店がみつけたりするのは、本当に楽しいものです。街も人も時間が止まっている感じで。
観光で京都に来たものの名所旧跡ショッピングってよりは街の方が萌えという人は四条よりも三条、河原町通よりも寺町通を探検するといい。歩きやすい靴とバス路線図とバス乗車券があればどこまで行っても宿に帰り着ける。たいして大きい街じゃないから平気平気。バスの路線は少々ややこしいかもしれないけれど、バスに乗ってわけわからん目にあうのも旅の醍醐味と思えばよろしい。ちなみにバスに乗る時は年寄りのそばに座って年寄りの会話に聞き耳を立てていると、ものすごいネイティブ上方ことばを聞けてお得です。いきなり話しかけてくる年寄りとかいるので注意が必要だけど。あと怖い運転手さんにあたると怒鳴りつけられるというオプションもあり。
そろそろ春の稼ぎ時で本屋には春京都本がじゃんじゃん出始めているが、世界遺産と同時になつかしい風景が残っているところとか、商業地区のまんなかにしっかり人が住んでいるところとかが、ガイドブック的でない京都の面白さだと思うので、「そうだ京都行こう…だけど普通っぽいのはちょっと」という人たちはそういうところを観るといいと思った。あと「どこの鯖寿司がおいしいですか」って聞かれたことがあるけど、京都関係者はそれぞれ好みの鯖寿司屋があるしそれについて語り出すと死ぬほど長いので、その辺はうかつに聞かないように注意すべき。聞く以上はうんちくにつきあう暇と忍耐を持つように。和菓子屋とか豆腐屋も同様ね。何を買うにしても最初はいわゆる名店・老舗のを買う方がいいとおもうけど、そういう店でも本店に行くと本店でしか売ってない(=デパートとか支店には入れてない)ものがあるので、おみやげ横丁みたいなところじゃなくて本店をまわった方が面白いと思う。店の造りもイカスし。いろいろうっとうしいことも多い街だけど、ぶらぶら歩くにはこれほど適した街もない。春と秋は死ぬほど混み合いますけど、よかったら京都でも歩いたってください。ちなみにこのようなぶらぶら系京都探訪にはグレゴリ青山の京都本→ナマの京都 がオススメです。読むだけで行った気になるところもグーよ。