朝日新聞の見識を疑う

もちろん「ロスト・ジェネレーション」のことだけど、理想高くて結婚できないとか予備自衛官とか過労うつ自殺とか、ネタのセレクションが煽りに軸足置きすぎで笑える。
ちなみに1月11日の回は過労による鬱で自殺という問題を取り上げていて、厳しい就職戦線を切り抜けても成果主義で安らぎはないこのジェネレーションという切り口だったようだが、例としてひいた携帯電話のチップつくってた方の過酷な労働状況として、後輩が逃げ出す+同僚が辞める+上司が抑うつ傾向→残った人の負担倍増→自殺というような描写があった。
それジェネレーション関係ないって!純粋に労働環境として劣悪なんだよ!
こういうシビアな問題を世代論に回収するとはどういうことだと。こんな問題は時代遅れだろうとなんだろうと、ゴリゴリの労働問題として、労働者の権利や基本的人権の立場から論説すればよいのです。
同和問題や在日韓国・朝鮮人問題など典型的な人権をめぐる議論が、だんだん単純な善悪二分法で片づけられなくなってきて、人権の保障と同時に逆差別や既得権益といったねじれの解消が必要であることは現代においては自明ともいえるのだが、朝日新聞はその点においてどちらかというと「そうはいってもやっぱり弱者の人権を」というスタンスで接しているように思える。それは全然悪いことではないし、ひとつの見識だと思い共感する。しかしながら、そういう複雑化した人権問題においてなお弱者に寄り添う姿勢をとるなら、なぜこのような、劣悪な労働環境というシンプルな人権の抑圧に真正面から向き合わないのか。世代論とかいってる場合じゃないでしょう。
産業構造が変化してきて、「労働」をめぐるお約束が瓦解する中で、企業の論理が優先してワーク・ライフ・バランスがむちゃくちゃなことになっているのは周知の事実。ロストジェネレーションとかいうくらいなら、労働環境是正のキャンペーンとか、よりよい暮らしのあり方を提言すればいいのに。言論機関として。
所詮、新聞社も企業であり、企業の論理に寄り添うが雇用者の人権なんてコミットしたくないということなんですかね。