遠方のブックオフ

 週末、所用で大変遠いところへ出かけたついでにブックオフを見かけたのでチェックした。宝の山だった。ほとんど行くことがない遠方だけに非常に悔しいが、もてる範囲にも限りがあるので文庫中心にだだっと買ってくる。
 山田正紀神曲法廷」、泡坂妻夫「奇跡の男」、今野敏「ST 警視庁科学特捜班 毒物殺人」、光野桃「ソウル・コレクション」、藤原規代「ぼくはね。1」、乙一「夏と花火と私の死体」、オーソン・スコット・カード「死者の代弁者 下」以上7冊購入。
 初めての作家の本はブックオフでは気軽に手が出せる。乙一はずっと気にはなっていたものの、流行に乗るのも恥ずかしいような気がして手を出しにくかったもの。自分にはどうもこういう通ぶったところがあり、我ながら嫌になる。広くいろいろ読んでこそ、読まず嫌いなどかっこわるい、とは思うのだが。乙一古本市場にじゃんじゃんでてきたみたいなのでやっぱり売れているのだなあ。自分の居住地近くのブックオフはかなり巨大で蔵書数もすごいのだが、砂漠のような品揃えなので、充実した店がうらやましい。ブクオフの品揃えはその近辺の住人が何を読んでいるのかをしのばせるような気がして面白い。うちの近くは民度が低いのだろうか。
 ところでずっと敬遠していた乙一に手を伸ばした最後のきっかけは、二階堂黎人の書評をめぐる騒動である。関係リンクは以下。
発端:http://www.sankei.co.jp/news/040104/0104boo011.htm 
   二階堂黎人乙一書評がどうも釈然としないぞと。
反応:http://d.hatena.ne.jp/kaien/20040104#p1 日刊海燕でのすっきりした反撃
   http://www.ltokyo.com/ohmori/040109.html 
   狂乱葛西日記1/5分。大森望のあまりすっきりしない反撃。というか業界人が業界人に書くこういう文章は、読者よりも自分のような傍観者を喜ばすだけような気がする。
   http://plaza.rakuten.co.jp/thomas7201/diaryold/20040205/ 
   面白いミステリを探して東奔西走! のまとめ。
   http://d.hatena.ne.jp/kaien/20040206#p1 ↑に日刊海燕がさらに反応。
   http://mystery.parfait.ne.jp/?date=20040512  
   Mytery Laboratoryのまとめ。コメント欄、特に愛・蔵太氏のコメントが秀逸に思える。
ということで、そもそもの発端から1ヶ月以上経過して、またもや乗り遅れまくってから気がついたというわけである。これ、盛り上がった原因は、書評自体の反論誘発性、二階堂黎人のキャラクタ、大森望の微妙な態度の反論(書評評とはとても思えない)、日刊海燕がよくチェックされているから、MysteryLaboratoryがよくチェックされているから、などの混合だと思うが、まあ寄与率は順にだんだん下がっていく感じだろうか。何が言いたいかというと、純粋なミステリ読者界の話題と言うよりは、ミステリ好き・ネットバトル好きの心をより引きつけているのではないかと。大森望「航路」ネタバレ掲示板にもその気配が見えてきわめて興味深い。もちろん自分もそのはしくれであるが、これがきっかけで乙一読書が始まるならば、もうけものと言えましょう。
 本体の書評については特にあらためて独自の感想はないが、やっぱり西尾維新舞城王太郎を「書かれている内容が、作者を中心とした身近な体験ばかり」というのはいくら何でも無理があるのではないか、に一票。むしろ非現実的なガジェットをあそこまでちりばめた両者の作品を読んでそのような読後感を持つに至っている、という原因を二階堂はよく考えるべきではないのか。あと人生経験や読書体験の少なさを年齢だけを根拠に推測するのは危険が高いので、「人生経験も読書体験も不足がちな《キミとボク派》作家たちの小説」などと簡単に言うべきではないと思う。