退職刑事2

都筑道夫 創元推理文庫
アームチェアディテクティブの退職刑事シリーズ、2冊目。退職したがまだまだ元気でひまを持て余している親父、が明治生まれなことに感慨を覚える。都筑道夫泡坂妻夫推理小説としてもだが、もはや、昭和の中ごろの市井の人を描いた風俗小説としても読めるし、そう思って楽しんでいる。主人公の現職刑事の息子が帰ってきて「和服に着替えて」くつろぐ、という場面にも懐かしいものを感じる。
中間小説の作家は時の砂にうずもれがちであるが、都筑道夫なども自分の世代ぐらいが最後の同時代性を持った読み手になるのだろうか。優れた作品を多く持つ優れた作家であることは間違いないので、時代を経ても読み継がれるだろうし本格推理ファンなどには「発掘」されたり「再発見」されたりするだろうが、そうではなく、娯楽のための中間小説としてばりばり読まれていた、という位置付けは時とともに移ろうのだろう。こういう書き方はすこぶる小林信彦の映画評・喜劇人評くさいが、自分は小林信彦の語るそういう時代性を好ましく思っているので仕方ないのである。