神曲法廷

山田正紀講談社文庫:神曲法廷 (講談社文庫)
神の顕現としての探偵。ダンテの神曲をモチーフに、全編に満ちあふれる暗示。符合。面白く、わくわくする。頁をめくる指が止まらない。ただ山田正紀ならではの社会批判というかなんというかのところもあるので、社会派的辛気くささには無縁ではない。けれどそれが物語と完全に抜きがたく絡み合っており、為にする社会批判ではないのが一流なところ。また、探偵の役割という意味ではミステリ論としても読める、かな。笠井潔講談社ノベルス版解説と郷原宏の文庫オリジナル解説の2編が収録されているが、正直、笠井版だけでいいんじゃないの?という気がする。とはいえ笠井の文章は評論(作品論)であり、いわゆる解説は郷原の文章であるから、「解説」に何を求めるかによって印象は変わるだろう。