勝ち組って

イブ・クラインのモノクロームのために KU.
大森望☆サクセスの秘密」:http://www.ansible.jp/interview/success.html
西島大介らが大森望にサクセスの秘密についてインタビューしている企画。読み物として面白いし、大森望の回答はいろいろ含蓄にとんでいるし、西島大介もおもろいこと聞いてるし、西島・大森両家の子ども見れるし、いいページだと思うけど、やっぱりなんかなあ...。

西島:今年大森さんが出した本は、『文学賞メッタ斬り!』や
『ホーンテッド・マンション』はじめ、どの本も重版してるし、
印税もガンガン入ってる。つまりSF界ではかなり羨望のまなざしで
見られている、「SF勝ち組」なはずなんですよ!
(snip)
西島:……で、大森さんが勝ち組になったのはやっぱり
「今、こういう翻訳をして、こういう立ち回りをして」っていう、
出版不況下をサヴァイヴするために考え出された戦略を
実践しているからこそですよね? 
今日はそのサクセスの秘密をお聞きしに来ました。

最初の方にこういう感じで「SF勝ち組」っていうテーゼがでてくるから西島大介はSFファンでサクセス希望なのかと思いきや、

大森:(snip)SF翻訳者としては明らかに伊藤(典夫)・浅倉(久志)チルドレンなんだけど、
SFファン的な役割モデルはむしろ鏡明。鏡さんは、SFの主流をはずれたへんなものを
見つけてきて誉めたり、ヒロイックファンタジーとかアメコミとかロックとか、SF以外の
いろんなものをSFファンに紹介するような役回りだった。SFの未来はべつに背負ってなくて、
端っこのほうで気楽に楽しくやってる感じ。ポジション的にはそういうのがいいなあとなんとなく思ってた。

西島:ああ、じゃあ、SF界の中にすでに大森さんのお手本がいたんですね。

うーん、鏡明を知らないSFファンはいないよなあ。それじゃ冒頭の「SF勝ち組」っていうのはどういうスキームで言ってるんだろう。
また、

西島:ああ、なるほど。読んでてひっくり返っちゃうようなお話として新本格ミステリを読んでたと。
ちなみに僕は個人的には新本格は全然読んでなくて、〈ファウスト〉から辿ってるんです。
太田(克史)さんに初めてお会いしたときに、「僕の手がけた本です」と言って舞城王太郎佐藤友哉西尾維新の本を渡されて、「えー! ミステリってこんなにも自由なんですか?」と驚いたら、
「いや、いろいろ事情はありますけど……」と言われてました。

というくだりを読んで、あのねえ、京極・森ときて講談社ノベルスとかメフィスト賞にわくわくしていたところに、流水と遭遇してしまった気持ちっていうのはねえ、と繰言が自動的に口をついて出そうに!おどろくばかりの東先生効果!いやでもほんと、大森望推薦という一言への禍々しい印象というのはねぇ、ホラ、その、あの.。
別に、古いのがエライとかリアルタイムがエライといってるわけではなくて、こんなの所詮“エンスー口相撲*1”ネタにすぎないんだけど、それでもやっぱりその瞬間瞬間の思いっていうのがあるじゃないですか。サクセスが確立されてから、後から辿るのもいいんだけど、その瞬間に遭遇してしまったひとびとの思いも一方にはあるんだよねっていうか、ファウスト世界が磐石ではないよというか、ファウスト史観がすべてではないよというか。なんか全然うまくいえないですけど、少なくともファウストから新本格を辿っているというのはあまりにも環境が違いすぎて、そういう視点からの評論とかを虚心坦懐に読むのはやっぱり無理かもと思いました。http://d.hatena.ne.jp/urouro360/20040921#cのkagamiさんのコメントもそんな感じでしたね。あんまり認めたくないけど、自分の苛立ちっていうのは、「○○も知らないくせに××を語るな!」っていうおやじの繰言なのだな結局。
それから西島さんは東先生同様、ボケ芸人なんだからつっこみがいたほうが光るよ、と思いました。大森さんの「だからひとの話を聞けよ!」っていうつっこみのリフレインが、かなり効いてると思います。こういう人を配するのが重要ですね。

*1:c.渡辺和博 車愛好者(エンスー;enthusiastから)が車ネタで口相撲すること