噂の娘

金井美恵子 噂の娘 (講談社文庫)
キオスクで文庫で出ているのを発見して購入。金井美恵子を置いているなんてキオスクも見上げたもんだ。
細かい描写の数々と文様のようにえんえんとつみあげられていく叙述になかなか読み進まず、返し縫いのようになんどもなんども繰り返されるフレーズ、文章に酔う(といってもアルコールの酩酊と言うよりは船酔いの酔い)思いがして読み通すのが大変だった。といいながら話の筋自体は早く次へとページを捲りたくなって、早く読むのは勿体ないと思いつつも、最後の30ページほどは腰を据えて読み切った。現代の日本の作家で読み終わるのにこんなに時間がかかる作品を書く人も少ない。それだけに読み終わるととんでもない充実感を感じる。さすが金井美恵子。人によって好き嫌いはあるだろうけれど、自分は最近の作品ほど好きだ。それにしても登場人物は相変わらず映画と小説をよく話に出すなあ。古き良き教養主義の香りがする。世の中の楽しみが小説だった時代。