ゆっくり読む「教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書」 その2

教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書
おお、ゆっくり読んでいたらこんなに日がたってしまった。でも引き続きゆっくり読むぞと。その1はこちら:http://d.hatena.ne.jp/urouro360/20050518#yk
さて第2章(1996-1998)。自分がインターネットを始めたのは1997年なので、この章から知ってる話が増えてくる。年表をつらつら見ていると、リアルで体験したサイト等は1998年あたりのものが多いようなので、1997年に始めながらも半年くらいは健全なサイトしか閲覧していなかったのかもしれない。自分がいつ健全でないサイトに耽溺するようになったかが今ひとつ思い出せないのだけれど。ただインターネットの厄介なところは、秀逸なテキストはすぐコピーされるしおもろいサイトにはすぐミラーが出来たりするところで、年表を見て「知ってる知ってる」と思っても、それがリアルタイムなのかどうかよく分からないものもある。閉じてしまったサイトには閉じた年月日について記載されていれば一層面白かったろうなと思うけれど、それはいくらなんでも作業量的に無理だろうなあ。年表で意外だったのは98年にぁゃιぃが閉鎖していること。もう7年も前か。え?そんなに前だっけ?という気持ち。あと小心者の杖日記に“ウェブ日記最後の砦”との言辞が献ぜられていたり、「ピュアガール創刊」に対して“ハイエンド”とコメントされていたりするところ。あれですよ、年表はデータの羅列かもと思って流してる人は損してますよ。年表もぐじぐじと読め、みんな。あと年表じゃないけど註で一番ビックリしたのはp.173の註19で「直リンク」に「じかりんく」と読みが示されているところ。「ちょくりんく」じゃないのか!知らなかった。
この章の年表の中では「ネットバカ一代」が引用されている。発表されたのはもっとあとなのでここで触れるべきではないかもしれないが、発表された当初、結構感銘を受けて一生懸命読んだ文章であり、懐かしかった。ネットの趨勢を個人の視点でぶったぎるという意味で教科書の前にはこれがだったよなーと思ってたけど、あんまりこれと教科書を結びつけて語る人がいないのは不思議。書いた人が1ch騒動で残念っぽくなったせいだろうか。単に「ネットバカ一代」をもうみんな忘れちゃったのかもとも思っていたけど、こちらは語り口系で「教科書」はデータ系だから連想されにくいのかもしれない。と書いてはみたが「教科書」だって十分語り口系だよねえ。今回好きだったところは、

その後ろ姿を横目でチラリ(舌打ち一つ)と見る度に、MP3はアンダーグラウンドからオーバーグラウンドへと舞台を移したのだなといつも思う。(p.178)

やっぱり文章がかっこいいよね。西海岸系web本だと思う。こういう語り口溢れるあたりとか年表でのお茶目コメントを見る限り、「正史」だなんて感じるわけない。朝日新聞文化面の感覚を疑ってしまう。読んでないんだろうけど。って、朝日新聞に載ったのなんて5/19の話じゃん*1!ゆっくり読んでるとネット話題に乗り遅れるなあ。
第2章後半はワレズの話なんだけれど、自分はワレズはやってなかったのでこのあたりはあんまり馴染みがない。ワレズをやってなかったのは興味がなかったのとスキルがなかったのの両方が原因なのだけれども、根底にはネットにそういうものを求めていなかった態度があるなと改めて思う。自分はくだらない文章、役に立たない文章、文字を通した喧嘩などを見るのが好きでネットにはまったし、今もはまりつづけている。なんでそれを自覚したかというと、ワレズ興味なかったしやってなかったのにそれに関係する出来事や人名に知ってることが多かったから。その原因を考えてみると「コンピュータ悪のマニュアル」とかを喜んで読んでたからだと思い当たった。当時も今もスキルは全然だめで、おぼろげに原理は理解しているけど具体的になにをどうやればいいのかさっぱり分からないというようなレベルなのだけれど、当時のハッククラック本には勢いがあって、書店の店頭でジャンク雑誌あさりをしているとものすごく魅力的だったのだ。そんで技術的なところは皆目分からないながら、書き手の語り口を楽しんだり、背徳の雰囲気を感じてうひょうひょとその関連の本を読んでいた。ハッカーカルチャーなのかもしれないけど、技術解説オンリーじゃなくて、語り口系の書き手が多かったんだよねえ。だからわからないながらも楽しめたし、買って損したとは思わなかったな。今でもきっと同じ書き手の人たちは同じように魅力的な文章を書いているんだろうけれど、世の中にぽっと「悪のマニュアル」が出た時の店頭での輝きぶりはやっぱりセンセーショナルでしたね。なつかしいなあ。
気になった誤字誤植。「四大誌→四大紙(p.80 右柱)」、「まだ速すぎた→早すぎた(p.176 下段)」
ではまたゆっくり読みます。次は第3章でーす。