天帝のはしたなき果実

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)
来ましたよ、メフィスト賞話題の作品です。購入のポイントは帯です帯。「宇山日出臣(故人)」ときたらねえ。あと有栖川有栖の推薦文。端的に言いますが、十中八九、地雷なんだろうなあと思いながら踏みに行って、やっぱり地雷だったのですがすがしく楽しみました。設定○、謎○、キャラ△、文体うへぇ、オチ超絶といったところでしょうか。端正なミステリでも端正なアンチミステリでもないので、オチに期待しないで読みましょう。
まあ「虚無への供物」へのオマージュを大々的に煽った作品というだけで眉にどれだけ唾をつけても足りないと思うんだけど、なかなかにすごかったよ、これ。まほまほ、すごいわ。十年前なら確実に壁に投げてたと思う、というくらい“くだらない”本です。くだらなさがすごい。くっだらなーーーーーー、と大声で叫ぶくらいくだらない。すごいよね、ここまでくだらないなんて。尊敬するわ。しかし、1600円かー。金銭感覚は個人のものだからなんともいえませんが、自分にとっては1600円はきついなあ。やるなあメフィスト賞。さすが問題作のための賞。
強いて言うなれば、キモペダンティズムという新しさはありかもしれない。ペダンティックなのに格好良くない。きもい。ミステリのペダンティストは大抵、いかしているのに。ペダンティックな探偵役がきもい。これは新しい、かな?人物造形がキモイだけではなく、テキストとして、衒学趣味と言葉の重なりが単にうざくて読みづらいというのは勿体ないところ。せっかくのキモペダンティズムがキモペダンティズム+胃もたれになってしまっている。
でも、つくづく思うけど、流水大説を知り、ファウストを知った現代人としては、これだけくだらなくてもなんか余裕を感じてしまう。そっと蓋をしておくくらいで。なんか壁本の基準が自分の中でおかしなことになってるなあ。メフィスト賞の功績でしょうか。
とりあえず(以下ちょっとネタバレ気味)殊能先生の例のアレに激怒した人は読んではいけないのでやめておきましょう。めるしびあん。