新潮45 04Mar.

先述は2月号だが新潮45、さらに3月号を読了。「水に落ちた犬を叩いている櫻井よしこ(c 佐高信)」の第二弾と猪瀬直樹の反論。猪瀬の反論は次号にも続くようなので期待。なんというか、細かい文章・発言上の言った言わない論争はひとまずおくとしても、普通に報道を見ている限り「猪瀬が変質した」という感想を持つほうが自然じゃないかと思うので、どれだけ効果的にそうではないというところを示せるのかを見たいとおもうのだが、櫻井の文章をとりあげて反論する部分はまあまあいい調子なんだけれど、今月分のまとめのところがまた“ええかっこしぃ”調になっているので、この分じゃ両論併記してあっても櫻井の方が信憑性があるように見えるなあ。対する櫻井は先月号こそ、佐高の言うとおり今更の感が強かったけれど、今月号はかなりおもしろい。自分の尊敬するいやみな文章の妙手リストにこれから櫻井も入れようと固く決意。猪瀬が日経新聞の社説で酷評された後、抗議あるいは反論に新聞社に直接赴いた、というエピソードを紹介したところのくだりを引用すると、

(前略)この件は、人によって表現が異なる。猪瀬氏が「怒鳴り込んだ」と語る人物もいる。「哀願調だった」と評する人物もいる。  日経新聞側には、氏が訪れ、三時間話し合った事実は確認した。私はそれ以上、知りたいとも思わない。ただ、改めて、氏の論の胡散臭さを感ずるのみだ。

ジャーナリズムを否定する「猪瀬直樹の作法」新潮45 04年3月号

知りたいと思わないとかいっちゃうあたりが素敵だ。知りたくないならほっといてやれよ、と言いたくなりますな。この後のくだりがまためちゃくちゃ面白いので、ぜひ広く読まれたし。いやー、いいですね、櫻井さん。髪型をどうやって維持しているのかも不思議なところだ。
その他の記事では、柳美里のエッセイが再開していてて大変うれしい。自分は柳美里に陶酔する読者には三島由紀夫ファンとか太宰治ファンにちょっとひいてしまうのと同じような角度でひいてしまうのだが、柳美里自体は嫌いではない。特に、この「交換日記」というエッセイはかなり好きだ。実生活でいたら間違いなくかかわりたくないと思うだろうが、このエッセイは必ず立ち読みするし、新潮45を買う動機の一つになっている。色川武大とか島尾敏雄とかそういう感じで受け止めているのだろう、おそらく。しかし編集者って大変な仕事だのう。あと息子は強く生きてください。他人の言うことじゃないですな。失礼。太宰とかってあんなにむちゃくちゃしてたのに本妻との間に子供が何人もいるよ!というのを知ったときはずいぶん驚きだったが、そう言う感じである。檀ふみとか連想ゲームとしか思えないのに火宅のお嬢さんなんだからなあ。人間ってすごい。
曾野綾子の妄言は今月も快調。小谷野敦は私怨でおもしろい。この人は世間一般とかに怒っているときより私怨の時の方が筆は冴えるんじゃないだろうか。兵頭二十八先生ものっていて今月号は充実しておりますな。しかし760円もするのか。今日初めて値段を認識した。高いけど面白い、というところか。