だから浅田彰が好きだ

en-taxiを今さら立ち読む。福田和也磯崎新浅田彰が琵琶湖の竹生島を訪ねていた。福田の長いレポートと磯崎の寄稿、本来の趣旨である福田×磯崎を外側から見た浅田の寄稿の3つのパートからなる記事。磯崎という人を余りよく知らなかったが、レポートに描かれる行動もさることながら本人の寄稿もかなりぶっとんでいて、建築家としての名声しか知らない身からはなにやら不思議な内容だった。こんな人であったのか、という驚き。福田の文章はまあいつもながらで、この人はなんだかんだいってよく勉強しているなあという節が伺えるのが嬉しい。教師とか啓蒙家としては優れているのではないかと思う。
面白かったのが浅田彰。福田のレポートに曰く、浅田はこういうとき神社の宮司さんときちんと世間話をしたりするらしい。福田がずいぶんそれを称えていて、世間話ができるところが浅田のすごいところ、とか、近頃まれな高貴な人、と述べた上に、愛子内親王立太子の際はぜひ教育掛に任命せよ、とのたまっている。かなり笑う。浅田は浅田で、書いている内容はもちろん普通のきちんとした内容なのだが、磯崎の解説を聞きながら建築を見るのは贅沢な機会だがそれを読者に紹介しようとする福田はえらい(だけど自分は怠惰な聞き手でいたい)とかなんとか書いていて、つまりは頼まれたから書いてるけど書く気無いんだよねといいたいのね貴方、という趣旨のことを婉曲にというかなんというか、書いている。これもまたかなり笑う。まあこういう勿体ぶった慇懃無礼な文章を書かせたら、浅田彰はかなりいい線行くと思う。自分としてはこういう調子が大好きなので、無理矢理にでも引っ張り出してこの2頁を書かせた福田はえらい。今後もぜひ引っ張り出していただきたい。
en-taxi自体は、紙質とか綴じとかフォントとか値段とかいろいろ気に入らない点も多いのであえて買ってまで読もうとはいつも思わないのだが、今回もやはりここだけなら買うのになという感じ。まあ趣味の問題であって雑誌として悪いというわけではない。しかし今号冒頭の坪内祐三の匿名コラムには呆れる。匿名ならぬ無署名コラムの興趣を著しく削ぐようなこと、なぜするのかなあ。スマートでない。この件についてはこちらも参考に。http://d.hatena.ne.jp/solar/20040331#1080736574
その他もいろいろぐるっと立ち読みして、新潮45を買ってでる。買う前にぱらぱら読むと、また柳美里が載ってない模様。おいおい。柳大好きッコとしてははなはだ心配。そういえばen-taxiにも特に載ってなかったな。まあああいう人に編集同人を頼むリスクは承知の上なのだろうが。彼女は福田和也なんかと商業的雑誌の同人をするよりも、高島先生の本に出てきた戦前の中国文学雑誌の同人のような、そういう熱気あふれる時代の雑誌同人ならよく似合うと思うのだけれど。おそらく当初は四人が一本ずつ書く予定であったろう無署名コラムも、そのような事情のせいでしわ寄せがいっているのかしらん。そうだとすればお気の毒ではある。
今日の本屋は近くにあるところなのだが、最近何となく利用していなかったところで、久しぶりに買い物をした。トーハンの出している新刊ニュースの小冊子をくれた。読むと泡坂妻夫が連載をしているようだ。儲けた、と思う。これからも月に1回はここで買い物をしてこれをもらわなくては。