新潮45 04Oct.

特集は「あの人は今」。ワイド特集ならではの薄っぺらさにがっかり。しかもライターの我の出し方がバラバラで、人称廃止の客観視点ルポから俺ならでは語りの人までいて、読みにくくてしゃーない。ある意味、週刊文春ワイド特集に激似。月刊誌なんだからもっと丁寧に行こうよ。大泉実成山本鈴美香ネタ書いてたけど、消えた漫画家からあんまり変わってないなあ。大泉は好きなのでもっとじっくりたっぷり読みたかった。
あーAV女優のことを本橋信宏が書いていたが、やっぱりぐだぐだでよーわからん。黒木香の“あの人は今”的記事を前に書こうとして取材しようとしたけどできなかった、というところの文章を引用してみる。

 私が訪れたとき、葛藤の末にベルを押せず引き返してきた。
すでに自分の中では、黒木香は完結していたのだが、物書きと
してはなかば失格であろう。

まずてにをはが。つぎに「なかば失格」ってのが。わからん。内容がぐだぐだ(あの人は今的記事で、あの頃の思い出がたりされてもなあ)なの以上に文章のぐだぐだは読んでてしんどいのでなんとかしてほしい。まー正直に言って、本橋信宏という人には来歴とか媒体とかで贔屓目があったので、最近目に付くぐだぐだぶりには自分への失望込みでなんかなあと思う。いやでもほんとに数年前はこんなひどくなかったんだと思うんだけど。目が曇ってたのかなあ。
連載。岩井志麻子は産むそうです。そんで独占手記だそうです。なにが独占だ、連載だっつーの。岩井志麻子ネタにうんざりする一方、柳美里に熱狂する自分の感覚は何が原因なんだろうなあ。たぶん、岩井志麻子の中途半端に冷静と情熱の間ぶりというかバカとカシコの間ぶりが、日常の地平からの視点を常に用意させるんじゃないかな。柳美里だと、うわー太宰だーって気がして何をしてもいいような気がするのだ。太宰って作品はさておき日常のエピソード聞いたらひどいもんじゃないですか。
全体にリニューアルしているけど、「メスぼん・オスぼん−女と男のための新旧ブックガイド」というタイトルはなぜ誰も止めなかったのだ。恥ずかしい。勘弁して。あと雑誌の性格的に、読者に男も女もないんじゃないのかという気がする。同じく新連載「商品格付け隊が買う」、企画はともあれライターが石丸元章でちょっと立ちくらみが。今月号では「奇跡の翡翠・ミラクルジェイド」を体験していた。「格付け隊員No.001」らしいけど、今月だけじゃなくってずーっと石丸が書くのか。要チェック。新連載では「40歳からの趣味ナビ」が一番よさげ。第一回は歌舞伎だが、ほとんどたもっちゃんにおんぶにだっこ、でもそれがいいのだ。歌舞伎でたもっちゃんを全面フィーチャーするというセンスは正しい。次回からもこのようなビッとした専門家をきちんと捜すことをぜひに期待。
あー今月は760円の値打ちなかったなー。文春なら320円ですむんだからなー。せめて文春3冊分くらいの情報密度がないとくやしいなあ。あ、ふれなかったけれど、第一特集は「酒鬼薔薇は治っていない!」です。しかも一橋文哉の。どうせ一橋だし眉唾はまあ当然なんだが、裁きを受けて再教育されたんだから「治ってない」の責任は当局にある。にもかかわらず当局叩きと同じくらいの分量で微に入り細をうがって事件をほじくり返す下劣さに呆れ。こんな懇切丁寧に犯行の詳細を書いている文章はじめてよんだ。相変わらずの犯人煽りぶりにはげんなりする。こういう猟奇趣味に迎合したようなことかくと、本筋の当局叩きとか法体系見直し議論がぼけると思うけど、そっちがフェイクだから別にいいのかなあ。