新潮45 1月号

総力特集「五大キャラクターの真相」では“昭和芸能界の父「渡邉晋」”が大変面白かった。戦後からのショウビズ界の話題はやはり面白い。その他の記事では兵頭二十八先生の中国領海侵犯問題が勉強になった。リニューアル以降、全体に実話系女性誌っぽい雰囲気が強くなっていて(以前の婦人公論みたいな雰囲気)、今号も国際結婚がどうこういう話題があるがもうちょっと事件/社会にふってもらいたいところだ。
連載では久々に曾野綾子爆弾が炸裂。タイトルは「卑小な愛国者達」。日本財団の出資で海上保安庁に射撃訓練用のシミレーションシステムをつくった、というエピソードと、日本財団で沖の鳥島へ調査船を出したというエピソードの前後に、“愛国心”についての考察が入る構成。ある意味で曾野さんの爆弾ぶりがもっとも味わえる構成である。シミュレーションシステムは不審船対策の一助となるようにつくられたそうだが、曾野さんは実は高速船をつくったらどうかと考えていたそうだ。はっきり書いていないが、おそらく海上保安庁に財団出資で船をつくればいい、と思ったみたいだ。ところがその提案は実現しなかった。それについて

しかしこの案は実現しなかった。私は詳しく内部事情を
理解したとは言えないのだが、耳に入って来た「雑音」
は次のようなものであった。
 船を作ることはいいのだが誰が油代と人件費を持つのだ。
 来年からの維持費はどうなる。
 そんなものを作ってくれるところがあるなら予算を削る、
と言われた。
 これらの理由が本当のものとしても、言った人は推測はつくが
確定はできない。真偽とりまぜた雑音に私はめんどうくさくなって
次第に考えないようになっていた。はっきりしているのは、断られれば
うちの予算も減らさなくて済むのだから、それはまた大変
けっこうなことだという思いである。

曾野さんは日本財団の理事長なわけだが、本当に財団のお金を「あげる」という感覚なのだなあということがよくわかる。「雑音」とおっしゃるが、維持費と人件費の手当こそがものをつくる上で一番大変でしょうに。つーか海保の船の油代がいくらかかるかわかってるのかと。単年度の経費がないわけじゃなくて、その手当ができないからこそ増設できないわけではないですか。もちろんお役所的消極性も大いに働いただろうし、役所ならではのうっとうしいことはあっただろうと推察する。しかしもし本当に必要であって推進していくつもりなら、こんな容易に予想された「雑音」に対して「めんどうくさくなって次第に考えないようになって」放り出すとはなにごとだ。まあまあ船が足りなくて対処できないのねー、じゃ財団からお金出してあげるからつくりなさいよー、え?維持費?そんなの知らないわよー、もーそういうこというならーいいわーやめればー、うちだってお金減らなくて結構なことだしー、って経緯なんでしょ?つまり。このつながりだと実際的見地から反対した人が愛国的でないみたいに読みとれるが、それは普通の態度ではないかと。日本財団のまわりの人も大変だなあと思いました。まる。