本屋→図書館→本屋

諸般の事情で時間をつぶす必要の多い一日だった。そのおかげで、久々に図書館で文芸誌を読みふけった。「新潮」で舞城王太郎の「ディスコ探偵水曜日」を一気に読む。めちゃくちゃ面白かった。舞城の書くものは、めちゃくちゃのぐやぐちゃでまったくわからないのにつるっと読めて興奮してわくわくして物悲しくなるのがすごい。アタマのなかには読後感のカタマリがあるが、まったくそれを言語化できない。続きが気になる。目次をぱらっと見た限りでは他はそれほど興味を引くものがなかったので舞城のみで本を置く。しかし、読まなかったとはいえ、舞城と古井由吉柳美里がならぶ新潮はパンクだと思った。
つづいて「文藝」夏号。特集はしりあがり寿クドカンいとうせいこう祖父江慎との対談、喜国雅彦辛酸なめ子などの寄稿を読む。どれもかなり面白いが、特筆すべきはいとうせいこうとの対談だと思う。しりあがり−いとうの80・90年代観、死生観、日常観、ネット観などもりだくさんで、所有本なら傍線を引くなあという箇所が随所にあった。いとうせいこうのラップへの思いも面白い。不勉強にしてこの号の文藝についての話題が世間でどれだけ盛り上がっているかよくわからないのだが、はてなキーワードを見た限りではまだあまり言及はないようだ。もっと話題になってしかるべき対談だとおもうのだがどうだろうか。立ち読み推奨。特集以外では豊崎由美のブックガイドガイド。まあまあ面白かった。あの文体やめればいいのになあ。書評欄をふと見ると、ykuriharaさんが「極西文学論」の書評をされていた。おお、そういえばそのようなことを氏のはてダで読んだな…と思ったのだが、直前のページの三田格による西島大介世界の終わりの魔法使い」の書評がわけわからなすぎてそちらに気をとられてしまった。いやーほんとにわからんかった。まあ若干注意力が落ちていたのでそのせいかもしれないし、それよりなによりソッチ方面に不勉強だからというせいだろうけど、それにしてもわからんかった。わからなさに晴々した。
最後に「本の雑誌」。これは最新号ではなくバックナンバーの04年ベスト選出号。おもしろそうな書名を控える。ブックガイドや書評がとりあげる書名を控えておくのは、もっぱら図書館の本を読んでいた子供の頃からの習慣だ。いやーそれにしても面白そうな本って多すぎるなあ。しかし特に普段、本の雑誌などを読んでいるわけではないのに、なぜ自分は「この作家最近はやってるなー」とか「○○はよんどかないとなー」という考えに至るのだろうか。ネットではないという感覚がある以上、陳列その他の本屋店頭情報が識域下で作用しているのだろうか。謎だ。
帰りに本屋でここ一週間ばかり迷っていた野坂昭如「文壇」を購入。550円。ようやくエルロイを読み終わったので購入できた。実は新潮45を買おうかとも思ったのだが、なんと文春文庫の「文壇」の方が安いことに気づいたのも後押し要因となった。生活に事欠くと言うほどではないが決して裕福でもない身には、760円は高いと改めて思う。willなら「文壇」より安かったが、さすがに表紙にでかでかと「盧武鉉大統領はゆすり・たかり・恩知らず」*1と書いてある雑誌を電車で広げるのもなあと思いパスする。もうちょっとこう、その、ねえ。