ゆっくり読む「オタクvsサブカル!」

ユリイカ2005年8月増刊号 総特集=オタクvsサブカル! 1991→2005ポップカルチャー全史
まあそういうわけで「教科書に載らない〜」もゆっくり読んでるわけですが、ユリイカ2005年8月号別冊、加野瀬未友ばるぼら編集「オタクvsサブカル!」も読み始めてしまったのでゆっくり読んでいるわけです。ここで一つ宣言しておきたいのは「ゆっくり読む」という行為で、それはあれですよ、いちいち手を止めて考えたりしてしまうからゆっくり読むわけですな。快楽のための読書であれば、ページを捲る手が止まることはありません。だからそうではなくて、自分にとってその本の中の記述を受け止めてしまうというのが「ゆっくり読む」ということです。まあなんだかんだ言い訳しても、結局のところ「オタサブネタが好きすぎる」で表現できてしまう問題なわけですが。
そういうわけで今のところ、赤田祐一インタビューまで読みましたが、いちいち言いたいことがてんこもりです。でも「言いたい」ってなんだろうね。不思議。自分はインターネット時代から著者にファンレターなど書くタイプの人間なので、ある本から想起されることがらを文字化することには抵抗が少ないんですよね。それを著者の目に触れるところへプレゼンすることについても。でもそれを自分名義のネット媒体に発表するという行為はなんなんだろう。ある意味では自意識のなせるわざでしょう。しかし自分が認識しているのは、「ああ、これがいいたいんじゃー」という感覚であって、ここでの記述を持って自分をプロデュースしようという気は全くないんですよ。って書いちゃうと意識しちゃうな。なんて冗談はさておき、あるものから受けた影響を虚空の誰かに叫びたい気持ちってないですか?自分はありありなんです。それがここで読書記録をつづる原動力でもあるし、今ここに感想を書こうとする原動力です。なんでしょう、叫びたい衝動プラス、叫ぶことにより自己整理が進むメリットみたいなもんですかね。まあでもこういう前置きをつけないと叫びすら表現できないと言うのはイマドキの我々っぽいですけどね。
それはともかく、「オタクvsサブカル!」です。どう考えても注目すべきは「!」です。この「!」を見た瞬間に自分は、加野瀬さんとばるぼらさんがエッグポーズでこちらをみながら片足をあげているスナップを想像しました。それぐらいの勢いです。絶対。で、ばるぼらさんが聞き手のインタビューを2本読み、当然それなりの知的刺激をびんびんに受けたわけですが、今、思うのは、聞いたり書いたりするばるぼらさんじゃなくて「聞かれる」ばるぼらさんをみたいなということです。インタビューイとしてのばるぼらさん。結構おもしろそうじゃないですか?まあ私はものすごいばるぼらさんに勝手に傾倒しているので歪んだことを言ってるかもしれませんけど。
一応自分の自認としては、オタクでもサブカルでもないのですがそれは後ろ向きの「ない」であって、オタクといいきれるほど教養がある自信がなく、サブカルと言い切れるほどオシャレだったり時流に乗ってる自信がないという、まあサブカルチュァに興味がある若い衆という漠然とした視点から読みました。そういう視点から、岸野さんインタビューで面白いナーと思ったのは、「検索式の精度」、「音楽に詳しいのはキモい要素」、「とにかく親のようにはなりたくないっていう文化」というあたりです。そうそう!感と、そうかなー感のグルーブですね。いちいち腑に落ちる。途中にでてきた「聞くべきものが多すぎる」問題については、自分はある程度以上身を捧げたのがミステリ業界なのでそこに引きつけて考えますけれども、どう考えても現代の人の方が「読むべき」リストは多いでしょうね。自分がはまった頃などは、もう戦前戦後の探偵小説ブームとか幻影城とかをフォローしていれば十分でしたが、今、西尾維新にはまった人が遡ろうと思うと、メフィスト賞・流水・大学ミス研・島荘などなど複数世代を重ねざるをえないみたいなところがあります。ジャンルが成熟して、細分化・複雑化するといろいろ大変だよな、とそこはかとなく思いました。
で、赤田祐一インタビューについていえば、これを読んで面白いと思った人はファウストvol.5をぜひ読むべきです。ファウストの赤田インタビューと非常に相補的であると自分は感じました。でね、面白いのがファウストのインタビューとぜんぜん起こしの文体がちがうんですよね。自分はライフヒストリー屋さんではないので、通常あまり文体については注意しないのですが、短時日に、類似テーマを扱ったインタビューで文体がここまでちがうというのはかなり面白いと思いました。要注目。ところで大泉実成の筆による赤田祐一伝はいつでるんですかね。いつかそのようなものがでることを心の底から待ち遠しく思っています。あと「あかまつ」の表紙画像に感無量。
まあそういう感じで、自分でもどうかと思うんですけどページページに興奮しつつ、付箋張りながらこまこまと読んでおります。いやー、かなり面白いよ。興味があって迷ってる人は入手するべき。やっぱり世の中で一番面白いのは一次データだよ。関わり方に差異があったり、角度が違ったりするにしても、ある時代を過ごした人の述懐を集めたものとして面白く読めます。人選も的確だしねえ。欲を言えば、次に同じような企画がある際はぜひ、ひうらさとる先生へのインタビューを入れて欲しいです。カテゴリ的にサブカルにあたるようなトンガリ趣味を持ちつつ、なかよしをフィールドにしていたという点でひうらさとるは特異的だと自分は思ってるんですよね。その点をちゃんと位置づけた評論、CUTiE、Zipper系が跋扈していた時代に従来の少女漫画誌で気を吐いていた漫画家さんってすごいと思うんですよね。同様の存在が、ぶーけとかにもたくさんいたわけで。レピッシュとか、ひうら漫画で知ったっていう層もいてもおかしくないとおもうんだけどさー。なにしろ100万部くらい?もっと?売れてたわけだし。
そして今、赤田祐一ゾーンを終わって吉田アミゾーンに入ってますがこれがまた面白そうな雰囲気。ああ、いい買い物だったなあ。読み進むとまたこまこまいろいろ書く予定です。これはあれだなあ、知的排泄作業だなあ。