啓示空間

啓示空間 (ハヤカワ文庫SF)
伝奇っぽいスペオペの上に、ハードSFとしても興趣に溢れる一作。帯の「堺三保氏絶賛」を見て買ってしまったが、絶賛するだけのことはあると思った。○○氏絶賛みたいなのに自分は結構弱いが、それでだまされることもたびたびなので、あたりを引くと素直に嬉しい。
内容については、大団円っぷりが特に気に入った。女の友情譚もいい。あっと思ったのはカルビンのアルファレベルの行方。随所に挿入されるちょっとしたシーンが素晴らしい。ボリョーワがイエローストーン星に降りるときのやりとりなど秀逸だと思う。
しかし本としての形については謎が多い一冊。最初に登場人物紹介があり、そこにはイラスト付きで登場人物が紹介されていて、そのイラストがまたなんちゅーかラノベ臭いので戦々恐々としてもいたのだが、中(本文)にも外(装丁)にもその後一切イラストがないっていうのはどういうことなのだろう。とても不思議な気持ちになるイラストである。それから厚み。京極堂に対抗してみたんですか?と言いたくなるとんでもない分厚さ。しかしこういっては失礼だが、ハヤカワ文庫はだいたい綴じに不安があるというか、ページがいまにもばらけそうな手触りが身上(なわけではないんだろうけど)なのだから、あまり厚みで無茶しないほうがいいとおもうのだが。文庫としての携帯性も落ちるし。ポケットに入らないと困るんだよねえ。片手で開きにくくなるのも困る。この厚みで定価1400円。1400円の文庫っていうのもなあ。二分冊にしたら一冊800円くらいになるのかな?何を思っての一冊仕上げなのか、たぶん葛藤というか戦略的判断があったのだろうけれど、ぜひとも聞いてみたいものだ。