IT技術は人間を進歩させたりしないし、むしろ新しい醜さを世の中に付け加える。だけどまあ、それが人間と技術の面白いところだとも思う。

もう歴史的事実なのかもしれないけれど、その昔、ブログ騒動というのがあった。「ブログ草創期を語るときに外せない存在」騒動だ。なんてことを何でいまさら思い出すかというと(ごめんねしつこくて)、某社の公式ブログで社員が社長と企業理念を素朴にほめたたえるエントリーを投稿しているのをみたからだ。
ここで某社と書いてごまかすのは持ってまわってあてこすっているわけじゃなくて、ごく単純に、書いちゃうと実生活に差し障るからだけど、実際には個別具体の事象とは思えないので、あなたの思いついた社名を好きなだけ入れてください。まあ誤解を恐れずにいえば、カリスマ経営者がやってる歴史の浅い社員数の少ない企業にありがちな気がするよ。
ブログ騒動ってなんだったんだろうか。あの頃、自分がもどかしく思ったのは、「いや、そんなんブログとか技術で語らんでも、そういうネットワークってもうあるやん!」という気持ち、つまりあるコミュニケーションのあり方を大発見みたいにいう言説への当惑と当時の個人サイト軽視が垣間見えるかに思えた態度への素朴な反感にあったのだが、そんな当時の自分の感慨自体が今では時のかなたで陳腐化してしまったようだ。資本主義は世界を変えるね。
実際、小規模な事業体にとって、いちいちナニカしなくとも情報を発信できるブログツールの便利さってすごく大きい。ナニカというのは例えば技術者にウェブページを作ってもらうこととかデザイナーに発注することとかサーバ管理部門にアップしてもらうための手間とかそういうことだけど。できるだけたくさん情報を発信することで、事業体やその商品への共感を高めてもらって、より有利になろうというのはマーケティングとして素直な発想だし。テクノロジーの利用方法としてよくわかるんだけど、それでいて、もぞもぞしてしまうのはやっぱりブログ騒動をしつこく覚えているような性格だからなのかもしれない。インプリンティング
とにかく小金持ったおっさんが自意識を垂れ流したり、それに対して恥ずかしげもなく内輪褒めを全世界公開で展開したりする未来をめぐって、当時、ネット言論界隈(笑)が炎上していたのかと思うと、いやまったく。