噂の真相 休刊記念別冊「追悼!噂の真相」

4月休刊号には休刊ムードはなくて、休刊ムードを味わうにはこちら、というあざとい商売については以前も書きましたが、休刊記念別冊は定価1000円、普段の二ヶ月分というあざとさ大爆発です。そこまであざといのに、中身には何か読んだ覚えのあるところが。グラビア班と校正者の記事は再録でやんの。頭が下がるもうけぶりです。うかうかと買ってるこっちがバカということですね。とびら、アラーキー、一行情報、おわび、とそれはもうぞくぞく出版されるようで、これらはさすがに買いませんが、買う人もいるんだろうなあ。退職金変わりですかね。香典返しというか。
中身はまあ、予定調和かなあ。川端副編の話が面白かったです。ここ1、2年、身内ぼめの記述が多くて辟易していたところがあるのですが、今回は意外にもそういう雰囲気は少なく、気持ち悪くなく読みました。「断念したスクープネタ」では、サトエリとツツミらしき話はBUBKAで読んだなあと。ノーベル賞Aさん、とやらのネタは興味深かったですが、週刊文春差し止め仮処分の昨今ではこれは無理でしょうね。「最後のメッセージ」では末永直海吉本ばなな上野千鶴子がおもしろかったです。見城徹の切れ風味や渡辺淳一の酔っぱらいも面白いけど、渡辺淳一は「最後のメッセージ」って知ってしゃべってるのかなあ。長年謎に思っていたVZエディタの社長のインタビューも面白く読みました。
噂の真相は噂と真相、つまりゴシップとスクープってうまいこと言ってる人がいたけど、買い続けてきたのはまさにそれが理由ですね。体制批判とか権威批判って、内攻して内ゲバになっちゃったり神学論争になっちゃったりしがちなんだけれど、うまいこと商売とイデオロギーが混ざってて、イデオロジカルなバックボーンを持ちつつも、ゴリゴリで現実から遊離しまくったダメ左翼という感じじゃないところが好きでした。この別冊を読むと、岡留編集長と川端副編の世代差がそれにきいている、みたいな捉え方がありましたが、それはそうかもしれません。イデオロギーを無邪気に根底における全共闘世代の素直さ、ぶれのなさと、そこへ没入することを回避するしらけ世代の用心深さ、という感はあります。世代と言えばもう一つビックリしたのが、岡留編集長が「俺は雑誌と結婚した」とうそぶいていたのは有名な話ですが、インタビューにて、今後はそれを理由に堕ろせっていえなくなるなあ、とか言っちゃってるのには驚きました。中森明夫のつっこみをうけて「避妊はしない」と断言しきってるし。うひゃー。この辺はもう、前時代的なマッチョですね。ちょっとくらくらきました。良くも悪くも70年代的です。こんなおっさんがトップで、よくフェミニズムちっくな誌面もつくってたなと感心します。
本誌は休刊ですが、岡留氏は今後は沖縄を拠点にバックパッカーとなり、おりにつけweb:http://uwashin.com/で近況とか情報を発信していくそうです。が、もう一つ不可解なのが、この沖縄移住なんですよね。奇しくも筑紫哲也研究の別冊宝島Realで与那原恵が、筑紫の無邪気な沖縄賛美に疑義を呈していましたが*1、この世代には沖縄へのノスタルジーみたいなものがあるんでしょうか。自分の知る限りでは、沖縄県には土建屋横行・ハコモノ行政の田舎にありがちなドロドロした闇が顕著にあります。選挙はアツイし、自殺率は高いし、失業率は高いし、離婚率も高い。都会では失われたコミュニティ、というのも確かにありますが、それは詮索と噂と陰口の強度のムラ社会から逃れられないということでもあり、必ずしもいいことばかりでもない。その辺、どう考えてるのかなー、わかって沖縄に移住するのかなーと、ちょっと不思議に思います。沖縄に移住して沖縄のダメなところに衝撃を受けて、沖縄噂の真相みたいなのを作り出したらおもしろいですが。
かれこれ10年近く読んでいて、ここ6,7年は毎号買っていたので、休刊はさびしいような気もしますが、来月から500円浮くわけで、さて次から何を読もうかなあと思案するのもまた楽し。

*1:立ち読みしただけですが、読む価値のある記事ナンバー1はこれだと思いました。あとはいまいちぴんとこなかったなあ。