宇山さん

って、さんとかいってみたりする。面識もないのに、というよりもはやこの人はある種のおはなしのキャラクタではないかと思うくらいに、宇山日出臣という名前は講談社ノベルス界隈の新本格とか中心に読んでいると頻出で、名物編集者としては当代随一だろう。僻地の一読者である自分なんぞが知っているいわゆる有名エピソード*1もいろいろあって、ほんと昔の文芸編集者みたいだよねと思いますけれど、ただやっぱり自分にとっては、「森雅裕と喧嘩した人」という印象が一番強いのですよ。
それも「推理小説常習者」に描かれる編集者と作家の対立のイメージではなく、「歩くと星がこわれる」に描かれるものすごくムカツク編集者のモデルのイメージ。なので長らく自分は、“宇山さん”という名前がほかの作家の文章に出てくるときはどうして普通に見えるのだろうと思っていたのでした。今にして思えば、森先生が普通じゃなかったんだろうな。自分は心から森雅裕を愛好しているけれど。森先生はたぶん、職業小説家として生きにくいタイプの人なのではないでしょうか。
文学賞メッタ斬りを読んでいて、メフィスト賞といいミステリーランドといい、宇山さんという人の業績の華やかさを見るにつけ、森先生を思ってなんかちょっとむっとする自分がいるよ、と思った。

*1:「虚無への供物」を出版するために編集者になった、とか。ウロボロスシリーズにもよく出ていたような。