お笑いについてまじめに考えてみるよ

おもしろいのになんで千原は今ひとつブレイクしないのかと。
千原兄弟の難点は、なんといっても天然ボケのお兄ちゃんがつっこみをしているところにある。Jrはお笑い芸人としては、切り取り系の芸人だ。この「切り取り系」という言葉は今突然思いついたのだが、日常を意外な角度で切り取って世の中に提示してみせるタイプの芸人をさす。切り取り系の芸人のボケには、つっこみ誘発系のボケと比べて、大変につっこみにくい。日常の切り取り方が異常なことが笑いに結びつくのだから、つっこみ方は日常に軸足をおいていなければならない。しかしつっこみ方が天然だとその辺が難しくなる。切り取りタイプの芸人は、実のところつっこみいらずなんですね。切り取ってぼやけばぼやき漫才、切り取って自分でつっこめばピン芸人、てなもんで、切り取ってみせるところが重要だが、切り取り方はセンスだし、提示してみせる技法はテクニックである。切り取り方というセンスは優れていながら、つっこみを誘発するボケポイントを設定できないのが、千原のネタづくりのしんどさではないかと思う。テクニック不足だと思うんですよ。
また彼らのコントではなくフリートークを見ていると、Jrはお兄ちゃんのことをおもしろいと思ってるのではないかという疑念を抱く。いくらお兄ちゃんがおもしろくても、それを引き出すことは全体の流れからいうとおかしい。この辺をもっとドライに、いじるならいじる、役割を分けるなら分けるで徹底した方がつたわりやすいんじゃないかなと思う。今のままでは、Jrはいじりたいのかいじられたいのか、なんだか中途半端な感じだ。
兄ちゃんうまなれよ、と10年前は思っていた。兄ちゃんのつっこみが、バリエーションが少ないし、中途半端な感じがする。このコンビは兄弟だから甘いのか。兄ちゃんは兄ちゃんで、Jrのことを心底感服しているのだなあというようにも思えるのだ。
総体的に、何年たっても素人くさいというかNSCくさいですね。脇が甘いというか、隙があるというか。これを超克すればとんでもないことになる気がするけれど、一方で、この脇の甘さがこのコンビの妙な魅力にもつづいているという気もする。少なくとも自分がしみじみするのはその効果だ。だからこのあたりはよくわからない。戦略が重要だろう。優れたお笑い表現をつくりあげたところで、世間的な成功につながるかどうかはようわからんし。
あと、兄弟で声が似すぎなのはなんとかしていただきたい。兄弟コンビって意識的に声変えたりするんじゃなかったっけ?なんかそんな話をきいたような。この辺はお笑い表現以前の、舞台人としてのテクニックだと思う。しかし彼らはもんのすごく面白いのに、役者とかしてる場合じゃないですよ。笑いで天下とってほしいなあ。