キマイラの新しい城

殊能将之講談社ノベルスキマイラの新しい城 (講談社ノベルス)
待望のシュノー先生新作は、またしてもなにやら、なにやら風なのであった。哀切漂ううつくしいはなしだと思うが、脳裏にはAge of Empireの画像が浮かんできたりしてハハハ。発想の貧困な現代っ子ですこんにちは。「鏡の中の−」や「樒−」と同じような感じがしたのは視点切り替えが多いからか。石動の鈍感な名探偵という特質のために、石動ものはどうしてもこういうふうになっちゃうのかもしれない。
しかし「黒い仏」でシュノー先生の御業に打ち震えたあと、相変わらずアントニオがシリーズ登場人物として扱われているのを見るに、今後どーするんだ、石動は知らんかもしれんがこっちは知っちゃってるんだけどどきどき、などと思っていたが、本書にはなるほどこうきたかという思いがした。それはともかく殊能作品は「ハサミ男」と「子どもの王様」以外は同一シリーズなので、基本的には順番に読むことを推奨する。
哀しくうつくしく、手に汗握る活劇である。今年も満足させていただきました。