月の扉

月の扉 (光文社文庫)

月の扉 (光文社文庫)

石持浅海第二弾。これも面白かった。アイルランドの薔薇同様、むちゃくちゃなシチュエーションで本格推理小説的状況を作り出す物語力がすごい。本格推理小説というと現実社会から浮遊した感じがつきもので、たとえば雪の山荘とか嵐の孤島とか、どーこーにそんなもんがあるんじゃい、といいたくなるような舞台設定は、自分などにしてみればそれだからこそいい、そこが様式美、てなもんだけど、眉をひそめるというか鼻で嗤うひとが多いのも事実。今作とかアイルランド〜とかの舞台設定は、ふつーの現代社会で彩りとなるテーマもいかにも現代的にもかかわらず、強引な物語力で本格推理小説的状況に持ち込む手腕が面白い。
ただまあ、今作よりはアイルランド〜のほうが個人的には好きだった。それは「沖縄でキャンプを主催しているカリスマ」よりも「アイルランド南北統一を目指す非正規武力集団」のほうが好きだという好みの問題もあるし、仮にも舞台を現実状況に置くがゆえの後味の悪さのせいでもある。